旅と温泉と生活と

北海道・道東を拠点に、いろいろなところを旅したり温泉に入ったり車中泊に憧れたり生活に関するレビューをしています

BTL 『冬物語』を観た!!

このためだけに上京してよかった…!

『ケネス・ブラナーが贈る最高のエンタテインメント』ブラナーシアターライブで 『冬物語』を観てきました。

実はこの演目、ロンドンで公演していたときからなぜか ものすごく気になっていて、 出演しているジュディ・デンチさまがオリヴィエ賞の 最優秀助演女優賞を受賞したと知ってさらに観たかったのでした。

観られるなんてほぼ100%諦めていたので、上映があると知ったときから 「絶対に観に行く」と決めていました。 往復2万強ですからね、ロンドンに行くことを思えば安いものです。

さてさて、この『冬物語』、こんなに気になっていたにもかかわらず ストーリーなどは全く知りませんでした。 なぜこんなに気になっていたのかは謎…ジュディデンチさま効果なのか。

というわけで、私の愛読書『シェイクスピア大図鑑』

ラストの意味が全く分からない。

「?」という想いを抱えつつ、劇場へ向かいました。

前段が長くてすいません。 さて!全編を観た感想はというと、

この作品を観ることができてよかった!! です。

「こんにちは、ケネス・ブラナーです」というコメントから始まる ブラナーシアターライブ。 ギャリック劇場の紹介や、映画館で舞台を魅せるということについての こだわりをケネスブラナー本人が語ってくれます。 美しいギャリックシアターの美しい天井は、ぐるぐる回ると 字幕も回っているように見える効果もありました…(酔うかと思った)。

そして本編のスタートです。 冬物語という作品は、一言でいうと 悲劇からの再生の物語。そしてここが大事なのですが おとぎ話です。 それに納得できないと、私のようにラストが「?」になるのではないかと。 今では「あ~なるほどおとぎ話」と思っているので ラストを含めてまあ満足です(上から目線)。

一幕は、レオンティーズというシチリアの王(ケネスブラナー)が 幼馴染の親友でありボヘミア王であるポリクシニーズ(ハドリーフレイザー) への強烈な嫉妬心が見どころでした。 というか、おれたち大親友だぜ!からの「アイツはおれの妻とうわきをしている…」が 急展開すぎてびっくりしました。 一度疑ってしまえば、何をやっても覆らないものなのか、と。 家臣たちもレオンティーズを諫めるのですが、 まったく聞く耳を持たないレオンティーズさん…。 そんなに!そんなに自分の妻が信じられないのか!!と思いつつも 「アイツらはおれのあずかり知らぬところでいちゃついている!」と 思い込んでいるさまが哀れで悲しいな…と観ていて感じました。

あげくには、ポリクシニーズを殺せ!と腹心のカミローに命ずるも 逆にポリクシニーズに警告をされて一緒にシチリアへと逃げられるのでした…。 カミローの世渡り上手っぷりが分かります。

そこで妻のハーマイオニが割をくってしまうんですよ~~。 レオンティーズは 「逃げた!やっぱりうわきだ!!」とか思っちゃって、 アイツらいないんなら、可愛さ余って憎さ100倍、 妻を処刑してやるぜ!とかなってしまうのでした…なぜゆえ…。

そしてここから悲劇が続くんですよね~。 アポロ宮殿からのもっともな神託をも信じなかったレオンティーズに天罰が。

大好きだったお母さんが急に牢屋に連れられてしまい、 心労がたたったのかレオンティーズの息子でもある マミリアスが急死!! あんなに…あんなに元気だったお子が…私もショック!!

そしてそれを知ったハーマイオニもショックで死亡!!!

そしてそして、やっとレオンティーズは気づくのでした…。 悲しすぎる!ばか!!レオンティーズのばか!!! もう、ここはケネスブラナーが哀れで哀れで。

そしてですね、ジュディデンチさま演じるポーリーナですよ。 迫力ありまくり!! 怖いとかそういうのではなくて、静かなのですが 画面を通じても分かる、私のような一般人でも感じるオーラというか 存在感がすごい。 一家臣の妻という立場でありながら、王にズバズバと物を言う 凛とした佇まいに震えました。 レオンティーズも、ほかの家臣以上にスルドイところを突いてくる ポーリーナを余計に忌々しく思うんでしょうね、 自分の子なのに違うと思い込んで ポーリーナの夫であるアンティゴナスに「捨ててこい」という命令を…。

そうそう、ここで 有名なト書き『熊に追われて退場』です。 わたくし、恥ずかしながらまったく知らなかったので やっとわかって嬉しかったです。 そしてアンティゴナスかわいそうすぎる。

そんなこんなで一幕が終わるんですけど、悲劇なんですけど、 レオンティーズの自業自得じゃん!! という思いもあるんですよね…。 哀れシチリア王は思い込みの激しいタイプだった…っていう。

二幕になると、冬のシチリアから夏のボヘミアに舞台が変わり、 ガラッと雰囲気も変わります。 どっちかというと悲劇パートが好きなのですが このガラッとの変わりさ。 これが私の『冬物語』を好きな理由かもしれません。

なんというか展開が早い。早すぎです。 ジェットコースタードラマという言葉がありましたが、 これはジェットコースター舞台なのでは。

二幕はアンティゴナスによって捨てられた パーディタを中心にストーリーが進みます。 なんと、パーディタと恋に落ちたのは ポリクシニーズの息子、フロリゼル!!

ところで、二幕で気になったのは ポリクシニーズの急な怒りっぷり。 「息子が恋をしたようだ。よーし、偵察しにいこう!」 なんてウキウキだった割に、全然気づいてもらえなくて 「そんなに父に言えないのかーー!!!」って 激高ですよ。私もびっくりですよ。 さすがはレオンティーズの親友だ…。

でもなんやかんやでめでたしめでたし、となるんですが まあうん、良いおとぎ話を観させていただきました。 ありがとうございますシェイクスピア先生…。

あ!そうそう!! オートリカス役のジョン・ダグリーシュさんの歌が とっても素敵でした。 今思い出せないのが悲しいので、何とかしてまた観られないものか…。 オートリカスは泥棒なんですけど、もとは 貴族に仕えていたっぽいんですよね。 なんというか憎めない役で、 ヘンリー四世とかのフォルスタッフや十二夜のフェステを思い出しました。 というかオートリカスはこの作品の カワイイを一手に引き受けていたのでは!! ってくらいの感じでした。

ほかの作品でも観てみたいなあ、と思う役者さんがまた一人 増えてしまった…。

ラスト近く、感動の再会シーンを 家臣たちの会話だけで表すところとか、無駄のない演出?も 良かったです。それまでの性格付けがしっかりしているので 会話だけでも想像できちゃうんですよね。

私が好きな場面は(たくさんありますが) 幼少期、レオンティーズとポリクシニーズの仲良さげっぷりを さんざんアピールする映像を映していた布がバサーと落ちて 最後の映像と同じポーズ (ポリクシニーズ・レオンティーズ・ハーマイオニの順に手をつないでバンザイしている) で登場するサーケネスの笑顔と、 ラストにも最初と同じ並びで手をつなぎつつ退場するところです。 最初と最後で同じ”両手に花”なのに、意味合いがまったく違う…!

あと、救われない人がほぼいないというのも おとぎ話っぽくてよかったです (マミリアスとアンティゴナスはかわいそうすぎるけども)。 夫の死を知らされたばかりのポーリーナにも、カミローの手が差し伸べられましたし。 ひとりで退場する人がいなかったというのが この『悲劇と再生の物語』らしいのかな、と。

いやあ、見応えありましたね! 幕間で流れたエイドリアンレスターのインタビューを観て 『Red Velvet』も観たくなってしまったんですけど… ブラナーシアターライブさま…。

ですがですが! 上質なイギリスの舞台作品を日本に居ながらにして観られる 機会があるということは幸せです! ありがとうございました!!

2016年11月23日 吉祥寺オデヲンにて鑑賞。

TOP