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北海道・道東を拠点に、いろいろなところを旅したり温泉に入ったり車中泊に憧れたり生活に関するレビューをしています

【観劇】BLUE/ORANGEを観ました

以前に観た『スリル・ミー』。

この作品には自分の中でかなりの衝撃を与えられました。

記事の中で「この演目を観てから成河さんのほかの舞台での演技も 観たい~!と思って4月の舞台チケを衝動買い。」と書いたのですが、その舞台がこの【BLUE/ORANGE】です。  

 

お話の舞台はロンドンの精神病院。 患者であるクリスとその担当医師(インターン)のブルース、 そしてブルースの上司で医師のロバートの3人が織りなす会話劇です。

ロバートは病院経営も考えなくてはいけない立場から クリスを退院させたい。しかしブルースは クリスを退院させたくはなく、もう少し時間をかけたい、と ロバートに相談をし…。

という感じなのですが。  

演劇なのでキャラクターが大げさになっている感は 分かるのですが、分かるのですが! 医師なのに2人とも興奮しすぎでは…。 冷静にならないとだめでしょう。特に患者の前では。

個人的に大声でワーワー言われるのが 苦手なので、同じ脚本でもう少し抑えた演出だったら 最高だったのになあ、と思わされてしまいました。

ブルースの思い込んだら真っ直ぐすぎるところ、 ロバートの世渡り術としての飄々さは どちらの立場も分かるしすごく上手い対比だったなと思います。  

自分だったらどうしたらいいんだろう、 とも考えたんですけど、結論は 「この2人の医師には絶対診てほしくない」でした笑。 笑、とか書いたけども、でも実際は診てほしくなくても自分で選べるわけもなく。

ブルースとロバートがワーワーしているせいで、 「境界性人格障害」のクリスがまともに 見えたことが「これはすごいブラックコメディ…」とも 思ってからすぐ「まともって????」となってしまいました。 まともってなんだろう。

そうそう、このクリスを演じた章平さん、 素晴らしかったです。 今回の舞台は、ステージを客席が囲むというものでした。 正面ではなかったのですが小さな箱だったので 最後列の私でも前から5列めくらい(だったかな)。  

お芝居の中で医師ふたりが興奮してワーッとなるところが あるんですけど(大部分) 一回その様子を見て後ろを振り返って「あれ見た?」みたいな 表情をするところがあってそれがクリスの性質をよく 表していたように感じたんです。 そしてそれがとても演劇的。上手いな〜。

医師ふたりはワーワーしていただけではなく(当たり前) 最初はブルースが「患者思いの熱血医師(正義)」で ロバートは「飄々とした熟練の手強い職業医師(悪)」 という感じなのかな、と思っていたのですが 会話劇が進むうちにブルースの凝り固まった考えは 本当に正義なのか、ロバートの診断のほうが信用できるのかも? ブルースは正義感でクリスの退院を引き延ばすのではなく、 「自分が正しい」「自分の思い通りにしたい」と思っている だけでは?それってどうなの?? とか、色々色々考えさせられました。

それはやっぱりブルースとロバートを演じた 成河さんと千葉哲也さんが素晴らしい俳優だから なんですよね。

そして特に言及はされていないんですけど、 この病院はNHSのことだったんだなあと。

私はそれほど詳しくないのですが ツイッターに以前よくNHSの話題が流れてきていて なんとなく気にしていたのです。 NHSとは「国民保健サービス」で、 国営の医療サービスというもの(だと思う)。

クリスはその人種から差別を受けてきたことも事実ですが 被害妄想のようなところもあります。 マーケットで働いているとは言っていますが いわゆる貧困層なのだと思います。 だからNHSの医療サービスを受け(通報されたのかな) でも自分では病気とは思っていないから 「早く出せ出せ」と言っている。 クリスもその病気からか支離滅裂だったりするんですけど その「境界」って難しいな、と思いました。 NHSの財政のことは結構話題になっていたし そこでロバートの言い分も分かるな、っていう。

ただねえ、ロバートは言い方がよろしくない。 もっとあるでしょ、上手い言い方が。 2人の医師の個性が強すぎたばかりに こんなことになってしまったっていう。

結局はブルースの保身が出てきたり ロバートの人の好き嫌いを仕事に出してきたり とかするわけで、 とても人間臭い作品になっていたと思います。 権力やエゴ、偏見と様々な要素が詰め込まれていましたね。

色々と考えさせられる作品でした。 ワーワー感がもう少し薄かったらとても好みだったのになあ。 でも俳優さん3人の熱量は高くて 惹き込まれました。

実は行く前は「今日舞台観るのめんどくさくなってきたな…」 とか思っていたのですが、この前に映画の 【僕たちのラストステージ】を観て 「舞台ってやっぱいい!観られるチャンスがあるんだから行こう!」 と渋谷の街を走って(時間ギリギリ)会場に行きました。

いや〜、観に行ってよかった。

2019/04/20 DDD AOYAMA CROSS THEATREにて観劇

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